現状に満足せず、成長戦略を磨き上げ
長期ビジョン「HIGH FIVE 2033」
への確かなステップへ

代表取締役社長 坂田 幸司

社長就任にあたっての決意
佐藤会長の路線を継承しつつ、さらに磨きをかけることが不可欠

この度、佐藤恒徳会長の後任として代表取締役社長に就任しました坂田幸司です。昨年11月、社外取締役を含めた指名報酬委員会より社長就任の打診を受けましたが、当初は年齢の近さから「次はもう一世代若い世代に託すべきではないか」と考え、即答はしませんでした。
しかし、1ヵ月間熟考を重ねる中で、「アイティフォーがもう一度成長を加速させるために、自分にはまだ果たすべき役割がある」との強い思いに至り、重責をお引き受けする決断をいたしました。
1987年の入社以来、長く開発部門に携わり、当社の成長エンジンである開発現場を熟知していると自負しています。 2008年にソフトウェア開発本部長、2014年に取締役常務執行役員技術開発本部長として技術系組織を率い、2019年には公共システム事業部長として営業部門も経験しました。 2020年10月には代表取締役専務執行役員として代表権を持ち、技術と営業の両面から経営を支えながら、これまでも佐藤会長と共に歩んでまいりました。
当社は当時の佐藤社長のもと、2023年度まで7年間連続で増収増益を果たし、2024年度は減収減益と足踏みしましたが、2025年度は過去最高の売上と利益を見込んでいます。
この成長を持続させるためには、第一に、長期ビジョン「HIGH FIVE 2033」が掲げる「地域還流型ビジネスを生み出す企業」という方向性を、佐藤会長が築いた路線としてしっかりと継承し、さらに磨き上げることが不可欠です。 その上で、技術力に立脚したイノベーションを大胆に起こし、成長の速度をさらに加速させる覚悟です。

仕事への緊張感を取り戻し、新たな挑戦へと踏み出す姿勢が必要

成長してる今だから思うこと
会社の在り方の「原点」を見つめ直し、実績がもたらす「安住」からの脱却を

堅調な成長を続ける一方で、私は、これからの成長のためにあえて現状に疑問を投げかけ、会社の在り方を徹底的に見直す必要があると感じています。 課題は大きく3つあります。
第一に、お客様との関係性の希薄化です。当社はお客様あっての会社であり、この原点を忘れてはなりません。 お客様の業務を深く理解し、潜在的な悩みを共有し、解決策を共に考え実行する――この基本姿勢を全社員が改めて胸に刻み、信頼関係を再構築する気概が不可欠です。
第二に、過去7年間の増収増益がもたらした「安住」や「ぬるま湯」的な体質です。営業活動においても、近年は過去の実績をベースにした提案に頼りがちな傾向が見られます。 本来は、当社パッケージのもたらすベネフィットを訴求し、お客様の未来像を共に描く提案こそが価値の源泉です。 また、自ら限界を設定してしまってはいないか。 その限界を打ち破る行動を起こさねばなりません。仕事への緊張感を取り戻し、既存顧客・既存業務・既定の成果にとどまらず、新たな挑戦へと踏み出す姿勢が必要です。
第三に、当社が持つ多くの強みを生かし切れていないことです。社員は豊富な経験と高いスキルを持っています。 その力を全社で共有し、活発な対話と切磋琢磨を通じて課題解決に臨めば、今以上に大きな力を生み出せます。 その結集によって、トップダウンとボトムアップが交差する、エネルギーあふれる組織へと進化させる必要があります。 業績が好調な今だからこそ、現状に満足せず足元を見つめ直し、成長戦略を描き直す好機です。この課題意識は、以前から佐藤会長とも共有してきたものです。
お客様との関係を深め、緊張感を持った仕事を進め、全社一丸となって活気ある会社を築く――それが、私に託された使命です。

アイティフォーの強み
経営理念の「寄り添うチカラ」で、お客様と共に未来像を描く

私が当社の最大の強みだと信じているのが、「寄り添うチカラ」です。
「寄り添うチカラ」は、実はお客様から頂いた言葉です。 かつて、あるお客様のシステム導入時に大きな障害が発生しました。 当時、私が責任者として現場を指揮し、全社を挙げて対応しました。 最終的に収束できたとき、お客様から「アイティフォーには寄り添う力があるね」と言っていただいたのです。
この経験を通じて、「どんな困難な状況でも最後までやり切り、お客様に笑顔を届けること」こそが、当社のDNAであり存在意義だと確信しました。 経営理念の「『寄り添うチカラ』で人々の感動と笑顔を生み出す」は、その想いを体現した言葉です。
また、当社はパッケージベンダーとして、単にシステムを納入するだけでなく、「このパッケージを導入すれば御社の業務にこう生かせる」「こういう成果が得られる」という具体的な未来像を描いて提案できる集団です。 かつてはお客様やお客様の業務、成果にも高い関心を持ち、深く入り込んで価値を生み出してきました。
しかし近年、その姿勢が薄れつつあるのではないかという危機感があります。 再びお客様の懐に飛び込み、密な関係を築くことができれば、当社は必ず次の成長を加速させることができます。
さらに、近年はパッケージ開発スピードがやや鈍化していると感じています。 新しい発想に貪欲に興味を持ち、アイデアを持ち寄り、迅速に形にする――そのスピード感を取り戻すことが、未来の競争力を左右します。
「寄り添うチカラ」を軸に、提案力と開発力を融合させることで、アイティフォーはこれからも持続的に成長していきます。

既存事業の深化と外部との共創を「HIGH FIVE 2033」へのステップに

中期経営計画「FLY ON 2026」
既存事業を着実に進めるとともに、新たな事業領域の開拓へ

長期ビジョン「HIGH FIVE 2033」では、2033年に売上高700億円、営業利益126億円の達成を掲げています。 その道筋として、昨年発表した中期経営計画「FLY ON 2026」では、2026年度に売上高280億円、営業利益48億円を目標に設定しました。
現状の強みを見直し、磨き上げれば、この数字は決して無理なものではありません。 2024年度は足踏みしましたが、この機会にしっかりと土台を築き直し、2026年度に向けて確実に飛躍できる体制を整えます。
事業分野別に見ると、フィナンシャルシステム事業は新パッケージ導入により安定成長が見込まれる他、決済ビジネス事業も継続的な成長が期待できます。 流通・eコマース事業では、ECサイト構築パッケージ「ITFOREC」を今年10月に全面リニューアルし、事業のけん引役とします。
CTIシステム事業は、2024年度は小口案件中心で苦戦しましたが、商品の精度向上と認知度拡大により、フィナンシャルシステムとのクロスセルで採用率を押し上げます。
通信システム事業では、電力会社向け「Megaplex」やセキュリティ関連の受注が2025年度にずれ込んだ影響で減収となりましたが、中長期では着実な進展が見込めます。
成長余地が大きいのは自治体向けBPO事業です。今年4月、子会社のアイティフォー・ベックスがアイ・シー・アールを吸収合併し、徴収業務から収納業務まで一貫して提供できる体制を整えました。両社の機能連携により、地方自治体への支援と地域貢献をさらに強化していきます。
また公共システム事業では、これまで東京本社にしかいなかったSEを大阪・九州・沖縄に本格配属。地元密着型でプロジェクト対応が可能になり、営業サポートや受注拡大に大きな効果をもたらすと見込んでいます。
これら既存事業を着実に進めれば中計目標は達成できますが、「HIGH FIVE 2033」の大きな目標に到達するには、オーガニック成長だけでは限界があります。当社は長らく自社開発を貫いてきた「自前主義」の企業ですが、近年はその強みと同時に柔軟性不足という問題にも気付きました。
そこで2024年度は、混雑可視化プラットフォームのバカン社や、インバウンドサービスのPayke社に出資し、CVCによる戦略投資を開始しました。今後もスタートアップや他社との協業、M&Aなどを積極的に進め、事業領域を拡張します。
さらにAIを活用した開発効率化にも着手。基本設計書・詳細設計書をAIに読み込ませ、プログラムコードを自動生成する仕組みや、単純作業の多い単体テスト工程をAIで自動化する取り組みをスタートアップ企業と共同で進めています。製造・テスト工程を半減できれば、開発スピードとコスト競争力の両面で優位に立てると確信しています。
既存事業の深化と外部との共創、この二輪で「FLY ON 2026」を必ず実現し、「HIGH FIVE 2033」への確かなステップとします。

企業価値向上に向けて
マテリアリティの着実な推進で、社会に選ばれ続ける企業へ

当社はB to Bの会社であり、一般の方の認知度は決して高いとは言えません。学生面談でも「就職活動で初めて知った」という声が多く、個人投資家の方々にも十分に知られていないのが現状です。今後は人材確保やIR活動の観点からも、知名度向上を喫緊の課題としています。そのためにはこれまで以上に、例えば投資家の皆様との接点を広げ、コミュニケーションを深めるために説明機会を増やしていく覚悟です。
また、B to Bに加え、B to B to Cをより意識したサービス提供を進め、最終的にコンシューマーに価値が届くことでブランド認知を高めます。
当社はマテリアリティとして「『地方創生』による社会貢献」「人財の深化」「経営基盤の強化」「DX推進による生産性向上、付加価値向上」「環境負荷の低減」の5つを掲げています。
特に「『地方創生』による社会貢献」は当社のパーパスであり最重要課題です。自治体と金融機関、地域企業同士をつなぐことができる、数少ない企業だと自負しています。当社が地域企業同士をつなぐハブとなり、地域経済と社会に貢献できることが、当社の強みです。現在、46都道府県で金融機関、31都道府県で公共機関にサービスを提供していますが、このネットワークを全国に広げ、真の地域貢献を実現します。
「人財の深化」も重要課題です。IT企業にとって人は最大の資産であり、社員一人一人が「寄り添うチカラ」を育てることが競争力の源泉です。50年で培ったノウハウの継承や若手の早期チャレンジ促進など、殻を破る成長機会を意図的に作り、20~30代から大きなプロジェクトを任せます。失敗はフォローし、成功体験へ導くアプローチで次代を担う人財を育成します。さらに経営陣の世代交代を見据え、中堅層を計画的に育成。自社の強みを深く理解し語れる人財が役員へ昇格できる組織を作り、事業の継続性を確保します。
「DXの推進」も改善の余地があります。特にコーレート部門では単純作業が多く、創造性を発揮しにくい環境が残っています。私の経験を生かし、ツール導入や業務可視化を進め、営業やエンジニアとも知見を共有し、作業から解放された社員がアイデアを生み出せる環境づくりを進めます。これは単なる効率化にとどまらず、企業全体の活性化と価値向上に直結します。
当社はこれらのマテリアリティを一体として推進し、社会に選ばれ続ける企業へと成長していきます。

地域で最も頼られる企業となり、自らの仕事に誇りを持てるように

これからのアイティフォー
ITが地域の暮らしを支える未来像を描き具現化することが真の地方創生に

日本全体で進む人口減は、当社にとっても直視すべき大きな課題です。 成長戦略の実現には、一人あたりの生産性を飛躍的に高め、限られた人員でより大きな成果を生み出すことが不可欠です。 これこそが、2033年度に売上高700億円という目標へ近づく最短ルートだと考えています。
当社は「地方創生」を掲げていますが、その取り組みは地方の過疎化がさらに進む現実を前提にしなければなりません。 過疎地域にも確かな人の営みがあり、そこには経済活動や地域文化が息づいています。 こうした地域で、ITがどのように価値を生み、暮らしや経済を支えられるのか――その未来像を描き、具現化することが、真の地方創生につながります。
アイティフォーは、地域で暮らす人々のIT活用を支え、「この領域ならまずアイティフォーに相談しよう」と真っ先に思い浮かべていただける存在を目指します。
地域で最も頼られる企業となれば、社員は自らの仕事に誇りとモチベーションを持ち、会社全体に活気が生まれます。 そこから新しいアイデアが次々と生まれ、その成果が業績に反映され、企業価値を押し上げ、最終的に株価へとつながる――そんな好循環を必ず生み出します。