社外取締役座談会

IT業界で異彩を放つ専門領域に特化し、顧客に深く関わるビジネスモデル
今年から、金澤さんと福田さんがアイティフォーの社外取締役に就任され、社外取締役も新体制となりました。改めて自己紹介をお願いします。
- 金澤
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私は大学卒業後、弁護士として企業法務の分野でキャリアを積んできました。アメリカのロースクールに留学し、海外の法律事務所や金融庁での勤務も経験しています。主に日本企業や金融機関に対し、法務やコンプライアンスのアドバイスを行ってきました。
アイティフォーについては以前から名前は知っており、特に地域金融機関との強い関係性が印象的でした。私の経験を生かして貢献できることがあるのではないかと思い、この度お引き受けしました。スタートアップ支援や、他社での社外取締役経験も踏まえ、ガバナンスやサステナビリティといった昨今求められるテーマについてもお役に立てると考えています。 - 福田
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私は大手メーカーでエンジニアとして社会インフラ系システムの開発に携わった後、品質保証部門の部長として製品やプロセスの品質管理を担当しました。その後は子会社の代表取締役社長を務め、経営にも関わってきました。こうした事業経験を生かし、取締役会での経営判断や意思決定に貢献できればと思い、ご縁を頂きました。
システム開発やプロジェクトマネジメントの経験、さらには参加しているリスクマネジメント研究会での活動などを通じて、事業の理解や監督に早くキャッチアップできると考えています。M&Aなどの重要な意思決定に対し、監査等委員として守りの観点からしっかり意見を述べていきたいと思います。

- 阿部
- 私は、就任以来4年が経ちます。米国の大学卒業後、半導体企業やフランスのベンチャー企業など国内外のスタートアップ企業で経験を積み、その後は家業に携わっています。小さなスタートアップでの挑戦や海外での実務経験を通じて、常に新規事業やイノベーションに関わってきた経緯があります。そうした背景を生かし、アイティフォーにおいてもグローバル経営や海外戦略、新規事業の推進といった面で貢献していきたいと考えています。
実際に関わってみての印象はいかがですか?
- 阿部
- 就任した当時に強く感じたのは、アイティフォーは最先端の技術を持つ「ITのプロフェッショナル集団」として華やかなイメージがありましたが、実際には地方自治体や金融機関、流通業などのシステムに深く関わり、縁の下の力持ちとして社会を支えているという点で、非常に地道に、かつ着実に事業を展開されているという、良い意味でのギャップを感じました。昨年は、社員の皆さんに挙げていただいたテーマで、3回にわたって座談会を実施し、率直な意見交換を重ねる機会もありました。取締役として関わる中で、社員の皆さんへの親近感もより一層強くなっています。
- 福田
- 私も、アイティフォーは当初「華やかなIT企業」という印象がありました。実際に関わってみると非常に開かれていて話しやすく、社員の皆さんの雰囲気も温かいと感じました。阿部さんをはじめ、気軽に相談できる環境があり、とても風通しのいい会社だと思っています。
- 金澤
- 当初は「金融に特化したシステム会社」というイメージが強かったのですが、実際に拝見すると、お客様のネットワークが非常に広く、多方面に深く関わっていらっしゃる。その広がりに驚き、大きな可能性を感じています。
逆に、どんな課題を感じていますか?
- 金澤
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専門領域に特化し、お客様との長年のコミュニケーションに基づいて信頼関係を築いてこられたのは大きな強みだと思います。一方で、その強みを今後どのように生かしていくかが課題ではないでしょうか。お客様との長年のリレーションを通じて蓄積されたアイティフォーのアセットを、世の中の変化に合わせてどう磨いていくのか、その舵取りが必要だと感じています。
金融市場は刻々と変化しています。特に地域金融機関は人口減少問題に直面しており、経営統合といった動きもあります。アイティフォーの強みは、地域金融機関の業務への深い理解、緊密なコミュニケーションに基づく強固な関係性にありますが、これからはさらに深掘りする形でのサポートが求められると感じています。 - 福田
- 私は、パーパスでもある「地方創生による社会貢献」に注目しています。全国の地域金融機関をはじめ、自治体、流通業などとつながっているのはとても大切なことです。これから人口が減少し、生産年齢人口も低下する中で、地方の活性化は社会課題の一つです。課題解決に向け、アイティフォーがITやDXのチカラを形にし、情報インフラをしっかり提供できる会社であるととても強く感じていますし、期待しています。
- 阿部
- これまでアイティフォーは、海外から仕入れたものを国内に展開することはありましたが、基本的には国内市場に特化していました。しかし、今後は国内にとどまらず海外へと視点を広げていくことにも、ぜひチャレンジしていただきたいですね。
取締役会のガバナンスと実効性、サクセッションプランの構築が課題
アイティフォーのガバナンスの実行性について、お考えをお聞かせください。

- 阿部
- 今年から、代表取締役として佐藤会長と坂田社長の新しい体制になりました。また、福田さんと金澤さんも新たな社外取締役として参画してくださいました。早速取締役会や業務執行委員会についても、良い意味で変えようとされていると実感しています。
- 福田
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6月に就任したばかりで、取締役会にもまだ2回ほどしか出席していませんが、既に実効性評価は行われており、そこで課題も上がっていると聞いています。運用面では、いくつか見直した方がいい点があると感じています。社外取締役は内部の情報が限られるため、事前説明会で十分に意見交換しながら取締役会に臨むことで、より経営判断に近い形で議論できるのではないでしょうか。
また、年間を通じて議論すべき取締役会のテーマがしっかり挙がっているかを確認する必要があります。さらに、監査等委員については内部監査室やコンプライアンスリスク管理委員会との連携を含め、役割分担を明確にすることで、より強固なガバナンス体制につながると思います。
- 金澤
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社外取締役として経営の意思決定に1票を持って参画することとなり、その責任を重く感じております。監査等委員という立場でも、必ずしもすべての事柄を監査的な目線で見なければいけないということではないと理解しており、他のボードの皆様と一緒に、会社を前向きに動かせるようにしたいと考えています。
取締役会では、とても活発に議論がなされている印象です。しかし、どうしても足元の業績に目が向きがちになります。社外取締役の立場としては、足元のみならず中長期的なアイティフォーの舵取りについて議論できるようにしていただきたいですし、私自身もそこに力を注ぎたいと思っています。 - 阿部
- アイティフォーは何事に対しても良い意味で真面目で、こうあるべきだという指標に対して徹底的に取り組まれる姿勢がありますね。単に数字を作るだけでなく、掲げたものに対して、トップを筆頭に真摯に取り組まれている印象です。ちなみに海外と比べたときに、日本のガバナンスの現状をどうご覧になりますか?
- 金澤
- 日本のガバナンス環境も整えられてきていると思います。日本企業は形を作ることは得意で、国が決めた方針をしっかり遂行するという真面目さがあります。しかし現在はそれだけではもはや通用せず、「なぜ必要なのか」「意味のある形で実行できているのか」を考えるフェーズにあると思います。アイティフォーでも「企業価値を高めていけるガバナンスは何か」を模索することが、一番大事だと思います。
- 福田
- おっしゃるとおりですね。社員の方々もオープンなマインドをお持ちだと感じています。その意味で、私はもっとアイティフォーらしさの出る活発な議論ができる会議体を目指してほしいと思います。膝を突き合わせて議論ができる場を工夫して設けてもいいのではないでしょうか。前例にとらわれず柔軟に変化できるのは、アイティフォーならではの強みだと思います。
- 阿部
- 私もその点に関しては同感です。今は、坂田新社長のリーダーシップのもとで、より良い会社にしていくための"変化"が生み出されるのを楽しみにしています。
ガバナンスの観点から、特に注力すべき課題は何だとお考えですか。
- 阿部
- 今後のアイティフォーの成長を考えると、次世代のリーダーをいかに育成していくのかは重要な課題だと感じています。その意味では、これまで以上に指名・報酬委員会の役割は重要になると考えています。
- 金澤
- 今年から報酬制度がKPIにしっかりフォーカスする形に見直されました。その経過や効果を拝見しながら、あるべき姿に向けた議論をリードしていきたいと思います。阿部さんが指摘されたように、これからのトップの育成は経営の最重点課題です。私たち社外取締役の立場から見極めるのは難しい面もありますが、指名・報酬委員会の責任を負っている以上、情報をどのように拾い上げていくのかが、今年以降の課題だと考えています。
- 福田
- 人財育成計画は長期的に立てていかなければなりません。その中でサクセッションプランをしっかり作ること、また代表取締役になるためには多様な経験も重要です。社長は会社を代表してさまざまな方と向き合う必要がありますから、外部から登用するのか、社内で育成するのかなど育成計画をしっかりと立て、計画的に経験を積める枠組みを整えることが重要ではないでしょうか。
- 阿部
- 社外取締役として会社に来る機会が限られている中で、次の後継者がどのような人物なのかが少し見えにくいです。あらゆる部署の実務や課題を理解している人材でなければ、バランスを欠いてしまうと感じています。後継者像は皆で共有し、皆で育てていける環境づくりが重要です。そのためにも、どのような人物なのかについての情報共有もぜひお願いしたいと思います。
会社にとっての正解に向けて
ジェンダーや年齢は関係なく一緒に考える
昨今、ダイバーシティ経営が強く求められていますが、皆様はどのようにお考えでしょうか。
- 阿部
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ダイバーシティ経営はどの会社でも喫緊の課題ですが、単に女性を増やせばよいという話ではありません。会社にとって何が不足しているのか、今誰が適任なのかを踏まえて取り組まなければ、本末転倒になると思います。一方で、アイティフォーの現状は、会議などで男性の視点に偏っていると感じることはあります。そういう意味で、私は、一般的に空気を読んで言わなそうなことも、あえて自由に発言させていただいています。
- 金澤
- まだすべてを把握しきれていませんが、アイティフォーはやや同質性が高いかもしれません。そのため、中途採用なども活用して、人的多様性を確保していくことは必要だと思います。私の経験上、ダイバーシティ経営の推進が遅れたことで、多様な視点で市場の変化をキャッチアップできず、長年苦しんできた企業を見てきました。今後は、そうした変化への対応力に応じて、企業の差別化がますます進んでいくのではないかと考えています。

- 福田
- 私のこれまでの経歴から見ると、アイティフォーはそれでも多様性が高いと感じています。キャリア採用も促進していますし、女性も多いと感じています。もちろんジェンダーに限りません。その意味で、中長期的に成長できるでしょう。さらなる高みを目指して会長や社長も動かれていると思いますので、新体制のもと、アイティフォーの多様性をさらに発信できるのではないでしょうか。
- 阿部
- 私が理想とするのは、ジェンダーや年齢にとらわれず、会議においても役職に関係なく、議題に対して何が正解かを隔てなく一緒に考えられることです。課題に直面したときに、立場や役職、性別は関係なく、何が最適解なのかを考えられることが重要ではないでしょうか。
ステークホルダーの皆様へ
佐藤会長、坂田社長の下 企業価値向上をサポート

アイティフォーが今後さらに成長していくために、どのような取り組みが必要だとお考えですか。
- 阿部
- 地域金融機関や地方自治体などとのつながりは、まさにアイティフォーの宝だと思います。今のシステムを進化させ、より良いものをお客様に提供することは成長の一つの方向性です。もう一つの方向性としては、新たなビジネスを付加価値として提供し、既存の顧客基盤を最大限に生かすことです。既存事業や従来の発想にとらわれず、今まさに地方が抱える共通の課題に対してもソリューションを提供できる会社になってほしいと思います。
- 福田
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地方創生という意味では、金融機関、自治体、百貨店だけでなく、交通インフラも必要です。どこまで関われるのかは分かりませんが、新しい分野にも踏み込み、情報インフラとしてできることを提供し、真の地方創生につなげていければと思います。
そのためには、自社だけでなく「共創」することが大きな意味を持つのではないでしょうか。共創の相手がどこかを含めて考えていきたいですね。新しい挑戦を一つずつ広げていけば、地方を元気にする意味でも面白いと思います。 - 金澤
- お二人がおっしゃったことが、まさにアイティフォーの強みですね。より良いシステムを作ることを前提に、さまざまな業種のお客様と協業し、新しい社会をつくっていくことで、アイティフォーの企業価値は高まると思います。特に若い方は、新しいことに取り組むことで心がワクワクします。心が躍れば、地方に貢献しているという実感も生まれ、その循環がさらに力を生むはずです。独創的な発想が次々に生まれ、それを前向きに受け止められる会社になってほしいと思います。
最後に、ステークホルダーの皆様にメッセージをお願いします。
- 福田
- 監査等委員として、まずは「守り」をしっかり果たします。ただ、ブレーキをかけ過ぎることなく、アイティフォーらしさを生かせるよう、取締役会で建設的な提言をしていきます。「この監査等委員に任せてよかった」と社内外のステークホルダーの皆様から言っていただけるチームを目指します。 企業価値の向上に力を尽くしてまいります。
- 金澤
- 先ほども話題に上った多様性という観点からも、社外取締役には大きな役割があると考えています。外部の客観的な視点をいかに経営に反映させるかが重要です。経営陣とは一定の緊張感を保ちつつも、バランス感覚を大切にしなければなりません。特に当社には健全な財務基盤があり、投資の余地も多くあります。だからこそ、前向きな取り組みをしっかり見守り、前向きに挑戦できる経営環境を整えることが、私たちの責務だと考えています。
- 阿部
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佐藤会長がなおご活躍できる中で、あえて坂田社長に経営を委ね、しかも技術畑ご出身の社長を選ばれたことは大きな意味があると思います。アイティフォーの強みである技術力と健全な財務基盤を背景に、今後は新たな開発投資やM&Aを通じて企業価値をさらに高めていくことが、坂田社長の大きなミッションではないでしょうか。公共事業、最新技術、そして潤沢な資金をうまく活用し、企業価値を一層高めていかれることを期待しています。
今後も3人の社外取締役の知見を生かしながら、ステークホルダーの皆様のご期待に応えてまいります。
Profire

阿部 和香
社外取締役
日本・海外のエレクトロニクス業界での勤務経験からグローバル経営や海外戦略に関する知見を有する。2021年から現職。

福田 伊津子
社外取締役(監査等委員)
大手総合電機メーカーで品質保証部長を歴任後、複数企業で代表取締役を務め、経営と品質管理の知見を持つ。2025年から現職。

金澤 浩志
社外取締役(監査等委員)
国内外の法律事務所や金融庁での勤務経験を持ち、企業法務・監査に精通。複数社で社外役員を務める。2025年から現職。